【新型コロナ】失業保険と雇用調整助成金はどちらの利用が賢いの?

失業保険と雇用調整助成金

この記事は2020年4月10日に執筆しています。

新型コロナの影響で、雇用調整助成金のわかりづらさからこんな疑問が生まれています。

・失業保険の方がすぐにもらえる?

・失業保険の方が金額が多い?

・従業員のことを考えると失業保険を受給してもらった方がいい?

今回はこれらについて解説させていただきます。

失業保険の場合

まず、失業保険で注意したいポイントを、大きく3つに分けて説明させていただきます。

会社都合か自己都合で異なる支給内容

失業保険は、会社都合か自己都合の退職かによって、支給内容がことなります。

それぞれのポイントは以下の通りです。

自己都合の場合

自己都合の退職とは、労働者側の判断で会社を退職することです。

その場合、下記のポイントが労働者にとって注意したい点となります。

 ・受給日数が少ない(例:勤務期間10年未満の場合は、90日分の支給)

 ・3ヶ月の間、支給されない 

会社都合の場合

会社都合の退職とは、使用者(経営者)側の都合で解雇することなどが該当します。

労働者にとっては、自己都合の退職と比べ、下記の違いが生じます。

 ・受給日数が、勤続年数と年齢によって増える

 ・3ヶ月待つ必要はない。但し、待機期間7日は対象外。(最初の失業認定後)

流れとしては、解雇してから離職票が発行され、それを持ってハローワークにて初回の「失業認定」を受けることになります。

その後、28日後に2回目の「失業認定」を受けていただき、この数日後に、待機7日を除く、21日分の手当が、指定した口座に振り込まれます。

以降は、28日サイクルで、28日分の手当が支給される流れになります。

会社都合による解雇で抑えるべきポイント

従業員の方を直ぐに解雇する場合は、解雇予告手当の支払いが労基法で定められています。

会社やお店を閉めて実際に稼働しておらず、休業してもらっている場合でも、雇っている期間は休業補償(平均給与の60%以上)の支払いは義務となります。

解雇を従業員へ伝えてから、どのタイミングで退職となるのかによって、支払いが必要な金額が3パターンに分かれます。

即日解雇の場合

 ・30日分の平均賃金を即日支払い(月給20万円なら20万円)

解雇予告して30日後に解雇

 ・休業補償を事業主から60%~100%の間で支払い(最低60%以上)、30日後に解雇

 (20万円なら最低12万円)

解雇予告して30日以内に解雇

 ・休業補償を事業主から60%~100%の間で支払い(最低60%以上)、「30日-支払った日数」後に解雇

 15日分を支払った場合、15日後に解雇することができます。

失業保険を受給してもらう場合の5つのデメリット・リスク

従業員を解雇して、失業保険を受給してもらおうと考えた方は、注意が必要です。

ポイントは以下の通りです。

再雇用を予定した失業保険の受取りは不正受給の対象

現在雇用している労働者を解雇した後に、再雇用を前提として失業保険を受け取らせること(受け取ること)は不正受給の対象となります。

不正受給が発覚すると、支給された金額の返還+その額の最大2倍の返還を求められます。(これを3倍返しと言われてます。)

支給期間が長くはない

会社都合であっても、例えば、勤務年数が5年未満の場合は、年齢にもよるが90日〜最大180日となります。

失業保険の支給金額

賃金の額によって、その50~80%支給となります。山形の方だと60〜70%前後が多いです。

ここで注意していただきたいのが、失業保険の受給期間(前述の場合は、3ヶ月から半年)で、新型コロナが落ち着くかどうかという視点です。

新たな手続き発生による負担

解雇された従業員は、新たに国民健康保険・国民年金への加入に伴う手続きが発生します。

当然、失業保険を受給するにも手続きは必要です。

そのため、従業員の方にとっては、手続きに伴う負担が発生することになります。

将来の年金額の減少

会社に雇用されていれば受給できるはずだったであろう、将来の年金額が減少することになります。

厚生年金のいわゆる報酬比例部分と呼ばれる年金額に影響します。

雇用調整助成金の場合

雇用調整助成金の仕組み

お店を休業し、休業補償を労基法の規定(平均給与の60%)以上の額で、事業主から従業員の方へ先に支払います。

その後、休業補償で支払った金額の90%(一人当たり上限日額8330円)が、国から会社へ支払われます。

国から事業主へ支払われるのは、申請した期間(1ヶ月)ごとに、対象分が2ヶ月後となるサイクルです。

*今回の新型コロナにあたって、中小企業は90%が国から助成される
*申請は事後でも問題なく、6月末までとされる

雇用調整助成金の特徴

雇用調整助成金の特徴を整理します。

先に会社から労働者へ支払う

国からではなく、会社(経営者)から休業補償を支払う必要があります。100%支払ってあげることができれば、従業員はもらうタイミングも金額も安心です。

上限付きの90%助成なので、「×人数」となった時に、人数が多い企業ほど負担は大きくなります。60~100%の間で経営者側は判断しなければなりません。

会社に国からの助成金が入るのが遅い

支払われるのは2ヶ月サイクルとあります。

但し、申請に必要な計画を用意してから申請手続きを行うなど、諸手続きと国の審査などの期間、今回の混乱状況を鑑みる必要があります。

実質的な支給タイミングは、申請を検討してから4ヶ月程度は遅れる想定が必要となります。

追記
4/10の閣議後の記者会見にて、厚労省加藤大臣が
「申請から支給までの期間は1カ月になるよう取り組みたい」と述べられました。
まだ約束されたものではないですが、今後に期待したいところです。
参考:雇用調整助成金、申請時の記載項目半減 厚労相発表|日本経済新聞

失業保険よりも助成対象期間が長い

雇用調整助成金は、コロナ関係なしの場合、通常時で1年で100日・3年で150日の上限付きです。

但し、今回は2020年の4/1-6/30までの期間分が、原則の日数に加えて助成対象の日数となります。

(原則の上限日数においては、この期間分をカウントしません。)

結果として、助成対象の期間が長いことが、会社にとっても労働者にとっても安心できるポイントとなります。

まとめ

個人的な見解ではありますが、コロナが数カ月程度で落ち着くのは難しいことが想定され、1年は掛かるものと捉えて対処する必要があると考えます。

そのため、結論としては失業保険よりも雇用調整助成金が推奨されます。

その上で、助成がおりるまでの間や、助成金との差分で生じる支払い金額、及び店舗・オフィスの家賃など、避けられない固定費をまかなうために、無担保無利子の融資制度を活用することも選択肢として持たれることが推奨されます。

尚、失業保険についてさらに詳しく知りたい方は、当事務所が監修している、「一般向け社会保障メディアのShahot」もご覧ください。

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